SES業界とは?仕組み・働き方・将来性を徹底解説!

SES業界とは?仕組み・働き方・将来性を徹底解説!

SES業界と言葉に、あなたはどんなイメージを持っていますか?

「未経験でも入れるIT業界の入口」「ブラックなイメージがある」「スキルが伸びないって本当?」など、気になることが多いのではないでしょうか。

そこで、今回の記事では、

今回の記事でわかること

  • SES業界の基本的な仕組み
  • 働くエンジニアのリアルな現場
  • 将来性や課題
  • 企業選びやキャリア戦略

について、ご紹介します。

良いことも悪いことも隠さずお伝えします。SESという選択肢に悩んでいる方はぜひ最後までお読みください。

目次

1. SES業界とは?仕組みと基本構造をやさしく解説

SES業界とは、システムエンジニアリングサービス(SES)の略です。

この章では、まずSESとは何か、ほかの契約形態との違い、登場人物の関係、そして業界構造をわかりやすく解説していきます。

①SESとは何か?簡単に説明すると

SESとは、エンジニアをクライアント企業に常駐させて、技術提供を行う契約モデルのことです。

正式には「準委任契約」と呼ばれます。この契約では、成果物ではなく「業務を遂行すること」自体に報酬が支払われます。つまり、プロジェクトが完成することがゴールではなく、エンジニアが期間中しっかり働くことに対して報酬が発生する仕組みです。

一見、派遣と似ていますが、SESでは指揮命令系統が元請け企業ではなく、SES企業側にあります。そのため、法的には「派遣ではない」と区別されます。

②SESと派遣・受託の違いとは?

SESと派遣、受託開発の違いは、「契約形態」と「業務の指揮命令系統」にあります。

項目SES(準委任)派遣(労働者派遣)受託開発(請負)
主な契約先法人同士法人と労働者法人同士
成果責任なし(作業提供)なし(作業提供)あり(成果物納品)
指揮命令系統SES企業に所属派遣先が指示委託元が成果を評価
法的区分準委任契約労働者派遣契約請負契約
トラブル時の責任SES企業が窓口派遣会社が窓口委託先が責任を持つ

一言でまとめるなら、「SESは受託のようで派遣に近い立場」です。

この中間的な立場が、柔軟性と同時に不透明さも生んでいるのが現状です。

③エンジニア・クライアント・企業の関係性

SESでは、主に以下の3者が登場します。

SESの登場人物

  1. クライアント企業(エンジニアを求める企業)
  2. SES企業(エンジニアの所属企業)
  3. エンジニア(実務担当者)

この三者の関係は、以下の図のように整理できます。

❶クライアント企業

SES 業界|クライアント企業

業務依頼&報酬→

❷SES企業

SES企業

←技術者派遣|指揮命令→

❸エンジニア

エンジニア

現場指示を受ける(実態)

建前では、SES企業がエンジニアに対して業務指示を出す形になっています。しかし、現場ではクライアントの指示で作業を進めるケースが大半です。

そのため、エンジニアとしては「自社の上司が見えにくい」「評価されにくい」と感じる場面も多くなります。

④SES業界の主なプレイヤー(企業タイプの分類)

SES業界の企業は、大きく以下のタイプに分類されます。

種類特徴
上流(元請け)企業大手SIerやITベンダー。プライム案件を持つ。報酬も高め。
中間業者(2次請け〜多重構造)他社経由で案件を得る。報酬は中抜きされがち。
エンジニア特化型ベンチャー技術志向が高く、研修や教育にも力を入れている企業が多い。
派遣系SES企業人材派遣に近く、業務委託の色が薄い企業も存在する。

エンジニアとして働くなら、できる限り「中間業者を避ける」ことが望ましいです。なぜなら、報酬が中抜きされ、スキルの評価や育成の機会も少なくなるからです。

一方、上流の元請け企業に入るのは狭き門です。

そのため、教育体制が整ったエンジニア志向のベンチャー企業は、未経験者や若手にとっては有力な選択肢になりえます。

2. SES業界で働くとは?現場のリアルと実情

SES業界で働くエンジニアは、派遣社員とも正社員とも違う、独特な立場に置かれることが多いです。

業務内容はプロジェクトによって大きく異なりますし、勤務先は自社ではなく「常駐先」です。

一見するとフリーランスのような自由さもありつつ、会社員としての安定性も持っている。しかしその一方で、スキルアップやキャリアパスの設計には課題もあります。

この章では、SESエンジニアの仕事内容、現場での対応の流れ、やりがいや課題、さらには「炎上案件」や離職率のリアルをお伝えします。

①SES業界エンジニアの仕事内容と働き方

SESエンジニアの仕事は、クライアント企業に常駐、または在宅で作業をします。

そして、システム開発や運用保守、インフラ構築などの技術支援を行します。担当する業務は、プロジェクトのフェーズやスキルレベルによって変わります。たとえば、未経験の場合はテストや運用保守など、比較的ルーチンワークが多いポジションに配属されることが多いです。

一方、経験を積むと、設計・開発や要件定義といった上流工程を任されることもあります。

ただし、常駐先が変われば、クライアントも変わるため、業務内容も変わります。そのため、長期的なスキル形成がしにくい面もあるでしょう。その反面、いろいろなスキルを身につけられるという見方もあります。

また、クライアントによってはSESを「ただの人員補充」としか見ていない現場もあります。

②SES業界|現場に入る流れ

SESエンジニアは、自社ではなく他社で働くことが前提です。

勤務場所や指示系統、業務ルールはすべて常駐先に準じます。

現場に入るまでの流れ

  • SES企業の営業担当が案件を探す
  • 案件先にエンジニアのスキルシートを提出
  • オンラインなどの面談
  • 条件も含めて、双方が合意

という流れを経て、常駐が決まります。

最近では、在宅での作業も多いです。が、実際に出勤して現場で働くことも少なくありません。そのさいは、その企業の社員と同じフロア・同じチームで仕事をします。

また、評価や昇給はSES企業側の基準です。そのため、日々の頑張りが必ずしも給与に反映されるとは限りません。が、逆に、良い人材は、期間が延長される。別の現場に指名される。など、すぐ、次の仕事が決まります。

③SES業界|やりがいと課題

SESの仕事にやりがいを感じる人は、主に「多様な現場で経験を積める」「技術の幅が広がる」といった点を挙げます。

現場が変わるたびに新しいシステムに触れられるのは、確かに魅力です。

しかしその一方で、「表面的な作業ばかりで、深掘りできない」「社内教育がない」といった悩みもよく聞きます。

また、客先常駐という働き方は、スキルアップの障害になることもあります。なぜなら、業務内容を自由に選べるわけではなく、現場の都合で仕事が決まるからです。

実際、「3年やってもテスター止まり」「評価は常駐先の人任せ」という声もあります。

④SES業界|「炎上案件」や離職率の実情

SES業界では、“炎上案件”と呼ばれる、過酷なプロジェクトが存在するのも事実です。

納期が厳しい。仕様が曖昧。クライアントのリテラシーが低い──などです。そして、こうした条件が重なると、現場は地獄と化します。

しかも、SESエンジニアは基本的にチームではなく単独で現場に入るケースが多いため、メンタル的に孤立しがちです。結果として、離職率が高くなることもあります。とくに未経験で入社したエンジニアが、1〜2年以内に退職する割合は少なくありません。

一方で、近年はホワイトなSES企業も増えました。理由はやはり人手不足です。どの職場でも、人材を確保するのが難しいので、すぐに離職されると困る企業は多いです。

さらに、研修制度やサポート体制を強化しているところもあります。

3. SES業界の将来性と課題を読み解く

SES業界は今、追い風と逆風のどちらも受けています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進と、慢性的なエンジニア不足。2つの大きな外部要因によって、需要は高まり続けているのが、追い風です。

しかしその一方で、逆風もあります。それは「多重下請け構造」や「スキルが身につきにくい働き方」といった根本的な課題です。

この章では、SES業界がなぜ今も必要とされているのか?どんな未来が予想されるのか?そして業界として改善すべき課題について掘り下げます。

①なぜ今、SES業界ビジネスが拡大しているのか

SESが拡大している一番の理由は、「人材確保のしやすさ」です。

正社員としてエンジニアを採用するには時間もコストもかかります。しかしSESなら、必要な期間・スキルを持った人材を外部からすぐに調達できます。

特に中堅・中小企業にとっては、自社で正社員を抱えるよりもリスクが低く、柔軟な人員計画が立てやすいため、SESは合理的な選択肢となっています。

また、案件ごとに人材を入れ替えられることから、流動性の高いIT業界には相性の良いビジネスモデルとされています。

②人手不足とDX需要でSES業界はどうなる?

結論から言えば、SESの需要はしばらく続くと見られています。

経済産業省の試算では、2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると言われています。特に、インフラ・保守・運用分野ではSESエンジニアの力が求められる場面が多くなります。

さらに、地方自治体のデジタル化や大手企業のDX投資が活発です。その中で、「すぐに現場に入って支援できる人材」は確実に重宝されます。

とはいえ、将来的にAIやローコード開発の進化によって、SESで対応しているような業務が自動化される可能性もあります。そのため、「誰でもできる作業」しか任されていない人材は、将来ポジションを失うリスクもゼロではありません。

③SES業界が抱える構造的な課題と批判

SES業界最大の問題点は「多重下請け構造」です。

発注元→元請け→二次請け→三次請け→エンジニア…というように、間に複数の企業が入り、それぞれが“中抜き”を行うケースが多くあります。

この構造によって、実際に現場で働くエンジニアの報酬が大きく削られてしまうという実態があります。

また、人材を企業に紹介した後のサポートに力を入れていないSES企業もあります。その結果「人材の使い捨て」「成長しづらい業界」という批判を受けてきました。

さらに、「SESエンジニアはプロジェクトの当事者意識が薄い」という見方もされがち。という見方もあります。

④政府・業界団体の動きと制度改正の影響

近年、SES業界を取り巻く法制度やガイドラインにも変化が出てきています。

とくに問題視されているのが、SES契約の実態が「ほぼ派遣」に近い場合です。

厚生労働省は、SES契約でも実態が派遣に該当する場合には、労働者派遣法違反になる可能性があると警告しています。また、2020年以降は同一労働同一賃金制度や労働時間の厳格管理が導入され、SES企業にもコンプライアンスが強く求められるようになってきました。

一部の業界団体や企業では「SESの透明性向上」や「中間搾取の抑制」を目指す取り組みも始まっています。

>> 参考記事:「SESなのに常駐先から指示を受けた!」元エンジニアのIT弁護士に学ぶ!今すぐ使える“労働関係”の知識【1】

4. SES業界で失敗しないための企業選び

SES業界は参入障壁が低いため、企業の質に大きなバラつきがあります。

条件や案件が似ていても、「入ってみたらブラックだった」「スキルが伸びない環境だった」という失敗談は後を絶ちません。

この章では、SES企業を選ぶ際に見るべきポイントについて、解説します。

①優良SES企業を見極めるチェックポイント

良いSES企業を見極めるには、「具体的な運営体制」と「制度の中身」を確認することが重要です。

以下のような項目は、信頼できるかどうかの判断材料になります。

チェック項目見るべきポイント例
評価制度の明確さ常駐先の評価がどのように給与や昇格に反映されるか
スキルアップ支援の有無資格取得補助、社内研修、メンター制度など
案件選択の自由度スキルや希望に合った案件にアサインされているか
フォロー体制(営業・人事)定期的に面談があるか、常駐中に相談できる環境があるか
商流(一次請けか多重下請けか)エンジニアがどの立ち位置で働くのか(直請けに近いほど良い)

とくに「案件選択の自由があるかどうか」は、働きやすさと成長性の両面で大きく影響します。

②エンジニア視点で選ぶべき条件とは

SES業界において、企業が掲げる「ビジョン」や「業界シェア」よりも大切なのは、日々の働きやすさと成長機会です。

エンジニア視点で見る条件

  • 月給制であること(時給換算では不安定になりやすい)
  • 待機期間中も給与保証がある
  • スキルに応じた案件が選べる
  • クライアントとの関係が安定している
  • フォロー面談の頻度が適切である

このような条件が揃っていれば、安心して働ける環境と言えるでしょう。

③ブラックSESの見分け方:よくある地雷とは

表面上は立派なことを言っていても、実態がブラックというSES企業も少なくありません。

注意が必要な場合は?

  • 「案件ガチャ」:希望と関係なく配属される
  • 「現場放置」:常駐後にフォローが一切ない
  • 「待機中は給与ゼロ」:契約が切れた瞬間から無収入
  • 「商流不明」:自分が何次請けかわからない
  • 「やたらノルマを強調」:営業色が強くエンジニア軽視の傾向

また、「未経験歓迎!学歴不問!高収入!」のような過度にうまい話も要注意です。研修がほぼない、いきなり現場に放り込まれる、といったケースもよくあります。

④評判・口コミをどう読み解くべきか

企業の口コミサイトは情報収集の手段として有効です。が、過信は禁物です。なぜなら、感情的な投稿や一部の古い体験談が目立つこともあるからです。

大切なのは、以下のような視点で口コミを“読み解く”ことです。

  • 「最近の投稿」に絞って読む(制度が改善されている可能性もある)
  • 「辞めた理由」が明確に書かれているか
  • ポジティブとネガティブのバランスを見る

口コミで「現場に放置された」「スキルが伸びない」という声が多ければ、その企業はフォロー体制に問題がある可能性が高いです。

一方、「営業の対応が丁寧だった」。「キャリアについて相談できた」。の声が多い企業は、一定の信頼感があります。

5. SES業界でキャリアを築くための戦略

SESは「とりあえず入れるIT業界の入口」と言われることもあります。

しかし、使い方次第では確実にキャリアアップが狙える業界でもあります。

問題は、流されるように働いてしまうと、数年後に「何ができるのか説明できないエンジニア」になってしまう可能性があることです。

この章では、SESでの経験を“積み重ねるだけ”にしないための戦略を、解説します。

①未経験からSESに入るのはアリか?

結論から言うと、「入り方と選び方さえ間違えなければアリ」です。

SES業界は未経験者の受け皿となっている数少ないIT業界の入口です。実際に、文系出身でPCスキルゼロの状態から、SESを経て開発エンジニアとして活躍している人も珍しくありません。

ただし、注意したいのは「未経験歓迎」と謳うだけで教育体制のない企業もあることです。何も教えられず、いきなり現場に放り込まれ、心が折れて辞めてしまう人も一定数います。

未経験者がSESを選ぶなら、研修が充実しており、案件の選択権がある企業を選ぶ必要があります。

②転職・独立にどうつなげる?

SESで得た経験は、転職や独立にうまくつなげることができます。

ポイントは「どの現場でも通用するスキル」を意識して身につけることです。

たとえば、開発の現場に複数回入った経験があるなら、次はフレームワークや設計書の読み書きにもチャレンジしてみましょう。保守や運用が中心だった人も、インフラ自動化やクラウドスキルに挑戦すれば、キャリアに深みが出てきます。

そして、数年後には「経験+成果」を武器にフリーランス。という流れになれば、単価は大きく上がる可能性もあります。

実際、月単価70〜90万円の案件をSES経験者が請けている例も少なくありません。

③年収を上げるためのスキル選びと実務経験

SESで年収を上げたいなら、「売れるスキル」を選ぶことが必要です。

技術的に高度であっても、案件が少ないスキルでは市場価値が上がりにくいからです。

今、特に単価が上がりやすいスキル領域は以下の通りです。

スキル領域単価傾向特徴
フロントエンド(React, Vue)中〜高案件数が豊富。即戦力になれば高単価案件も多数
インフラ(AWS, Azure)運用→設計へスキルアップできれば市場価値UP
バックエンド(Java, Python)中〜高業務系システムに多く採用。汎用性が高い
PM/PL(上流工程)非常に高い経験年数とコミュ力が武器になれば単価100万超も

もちろん、スキルだけでなく「現場経験」も大切です。

なるべく短期での転々より、長期で結果を出すことで「信用」も蓄積されていきます。

④フリーランスとSESのメリット・デメリット

最終的にフリーランスを目指す人も多いですが、その前にSESと比較しておくことが大切です。

項目SES社員フリーランス
安定性月給制・福利厚生あり契約ベース。収入に波がある
案件獲得会社が営業してくれる自分で営業・交渉が必要
自由度配属先は選べるが制限あり完全に選べるが責任も伴う
スキル形成案件次第。教育体制に差がある自己研鑽と経験でしか伸ばせない
単価中程度(30〜60万/月が相場)高単価も可能(70〜100万以上も)

フリーランスには夢があります。が、実際には「営業力」や「自律力」が求められます。

SESでしっかり経験を積み、ある程度の武器を持ってから独立するのが現実的です。

6. SES業界とは?まとめ

SES業界は、使い方次第で「キャリアの踏み台」にも「消耗戦の泥沼」にもなります。

だからこそ、正しい知識を持って企業を選び、自分のキャリアを主体的に設計することが重要です。

現場での経験を無駄にせず、着実にスキルを積み重ねていけば、転職や独立といった次のステージも見えてきます。
SESはゴールではなく、通過点。

その価値を最大限に引き出すのは、あなた自身の選択次第です。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

>> エンジニアを主役に!安心して、納得して、成長できるSESの新しいかたち

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